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(491)6万馬力で相模湾クルージング。 2003-10-25



人間が創作した"動くモノ"に異常なる興味を持つ友人のN氏
職業がら、内燃機関の理論と知識には並外れた造詣を持つのは当然とは言え、
仕事をも休止してまでも体験しに行く対象とは?


なおかつ、同行への誘いをこれまた同様に仕事をほったらかして行く私もどうかと思うのだが、
案内された並木の向こうの桟橋に、静かに停泊中のソレは、海上自衛隊の精鋭護衛艦だった。
●鮮明画像。(86KB)





排水量:4400トン。全長151mの巨体とも言える船体に対空ミサイル、76mm速射砲、機関砲、対艦ミサイル、おまけに3連装魚雷発射装置。
なおかつ、海面レーダーに対空レーダーを備えたハイテクの塊
しかも驚異のガス・タービン機関、6万馬力の驚愕なるパワーで艦を時速55キロで航行する。

威圧されるかの様な艦船色に見事に塗装され、潜水艦をも含めた超ど級の艦艇群が40隻あまりの規模で相模湾に集結しての観艦式
テレビのNEWSなどで、時たま映像が紹介されるが、実際に乗船しての体験は今までのイメージとは大違い。
記録する充分過ぎる価値と衝撃モノであった。●鮮明画像。(107KB)






(その1)横須賀から東京湾へ。

真っ青な空の下、"天気晴朗なれど波もナシ"ゆっくりと離岸する。
不気味なたたずまいを見せる米軍の空母"キティ・ホークを横目に見ながら浦賀水道を横切り東京湾に出れば、
後方には、すでに知らずの内に5000トン級の艦艇が追り、迫力ある縦編隊を組みつつ、相模湾で待機している同様の艦隊との合流をするのだ。


デッカい船に乗るのは四国へ向かったフェリー以来だが、さすがにガス・タービン4基のフルパワー
ディーゼルとは異質の金属的な高回転サウンドが足元から響き、あたかもレシプロに対するロータリーのフィーリングか。
速度は比較にならない加速を感じさせ、甲板への風も予想外に強くなった。●鮮明画像。(161KB)






(その2)不気味な美しさ。

軍事用の艦船は当然のごとく、完全なる装飾的排除と必要なる装備は、あくまでも実戦時を想像させる不気味な雰囲気が迫る。
落ち着いて廻りを見あげれば、確かに非日常的な形態が視界に入る。





ミサイル発射装置や速射砲、ヘリ着艦のための指示ルームなどが独特なモノカラーに塗装され、
当然ながら一般人の立ち入り禁止区域には厳重なロープが張られ、隊員が見張る。
そのシルエットは機能的であるがゆえ、ある意味の美しさを放つのが不思議なのだ。 ●鮮明画像。(105KB)







(その3)集結。

どこで待機していたのだろうか、いつの間にか周囲は自衛隊の艦船で埋まりつつあり、数十隻の艦艇で異様な光景である。
小さなデジカメなどには当然入りきらない、この迫力。

通常なら船舶のニアミスになると思われる至近距離までに編隊を組みつつ、列を整える走行は時折、右へ左へと、
この巨体を制御させる毎に身体にGを感じるほどで、思わず足を踏ん張るか、近くの手すりを持つ手に力をいれなければならない。
すでにこのエリア海域を占拠している状態なのは充分に理解可能な艦船群なのだ。●鮮明画像。(76KB)





(その4)そして編隊航行。

見事な一列縦隊に並んだ艦船の遥か先頭艦がUターン。続く艦艇群も同じ航跡で向きを変え、観閲部隊と受閲艦隊が至近距離で対面通過。
これほどの多き艦隊だったのかと驚くべき数である。複数の潜水艦は潜行と浮上を繰り返し、
超高速航行が可能なミサイル艇などは、速度を持て余しぎみで回転やジグザグ航行の水しぶきは強烈そのもの。

そしてなお、後方を見ればライトを点灯した航空機が超低空で編隊を組み迫ってくる。
ヘリコプターのパイロットなどは表情さえ判別可能な距離と爆音はファントムやF-15で頂点に達する。 遥か離れた沿岸でさえ聞こえるだろう。●鮮明画像。(58KB)





(その5)着弾。

天地を揺るがすほどの艦船からの砲撃音の凄さは現実に聞かないと語れないだろう。
数百メートル離れた艦からの発射音がコレならば、あの戦艦大和の40センチ砲の砲塔内にいた兵士はどうだっただろうかと思わずにはいられない。

真っ黒なシルエットの弾は見る間に点となり、数キロ先の海面に着弾。猛烈な水柱を上げる。発射直後の奇妙な煙が印象的だ。 ●鮮明画像。(66KB)



敵からの視界防御のため煙幕の中から突如現れる艦船は、さながら戦場と言っても良いくらいの図になり、息を呑む光景である。
次々と攻撃のデモショウは進行、圧巻なのは対潜水艦への爆雷だ。

海中での爆発の衝撃波が海上に不気味な円が確認できた直後、地響きの様な振動と共に船体から甲板まで靴をも通過して"カツーン"と衝撃が走る。
あの戦争映画などでお馴染みのシーンだが、現実に海中深く潜行している潜水艦の中で、 息を殺して聞く心境は想像を絶する恐怖だったろう。





(その6)戦争を知らない子供達。

私でさえ終戦後、数年経てからの生まれである。戦時中に爆撃機のパイロットだった父から、小さい頃に聞かされた話は多い。


ある一人の特攻パイロットの事実。


当時の彼らの建前と本音は聞くすべも無いが、敵である連合軍の艦船乗員をも震え上げさせたその攻撃方法は、
究極の愛国精神の実行と賛美されていた。

特攻に参加した彼は同僚と共に基地を飛び立ったが、目標手前で愛機の故障が発生。壮絶な最後を遂げた帰らぬ仲間とは別に、一人だけ帰還する。
次回、故障を修理し再度飛び立つも、不幸にも故障の再発で同様の帰還。


以後、運悪く数度の帰還を繰り返す。如何なる言い訳も効かない何回めかの基地からの発進後、彼はまたもや引き返すが、基地には二度と着陸しなかった。
ある場所まで飛んで行き、上空を何度も旋回した後に畑に突っ込み自爆した。婚約者の家のすぐ付近だったと言う。


実際に彼がどの様な非難を浴びたかは不明だが、きっと周囲の誰もが判っていたのだろう
本人達の深すぎる悲しさ。艦尾に誇らしくはためくフラッグの元、数え切れない悲しさも歴史の中にあるのだろう。

そんなことを知ってか、知らずかの水兵隊員。多分、私の子供達と同年齢と推測される。 ●鮮明画像。(107KB)





(その7)エピローグ。

実弾発射を含めたビッグ・イベントを終了させ、何事も無かったの様に夕闇迫る桟橋に休む艦艇群。
明後日には再度、最高司令官でもある、あの総理までを迎えて
同様のパフォーマンスを行う。

本来、民間人には非公開が原則だが、世界の緊張のテンションが日本を含め関心を持たざるを得ない状況であり、
理解を求める事は充分に認識している。●鮮明画像。(145KB)

しかし日本の自衛隊と言えば、現実にはこうして存在が歴然とあるものの、
常にそのスタンスが問われ続ける中でのイベントの背景を考慮すれば、有事へのアクションと同様の大きな意味を持つのは当然。
ある意味"お客様"になった我々見学者への対応とサービスは文句の付けようが無かった。


実際、参加者の中には当時、少年兵であったのだろうか、水兵の帽子をかぶりツエをもついた老人、
あるいはマニアックな人々、あるいは.........。と多種多様であり、
耳にした会話の中からも、かなりの地方から、しかもこの日を待ちわびていた一団もあった。


往路に船から見た房総半島側に並ぶ緑の山々。美しい日本の国。
保持したい、守りたいと感じた事だけは事実である。体験後の感想は複雑な心境と言っておこう。

税金のムダ遣いを叫ぶのも良いだろう。この制服に憧れるのもよいだろう。理想をこねて偽善者になるのも滑稽だ。
ナショナリズムのDNAに操られて各国の防衛、攻撃、報復と現実は騒がしい。
プロセスは問わないが最後のドアは完全破壊ではなく、本来あるべき平和な姿である事を望みたいものだ。



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